その夜は、なぜか眠れませんでした。
布団に入って、電気を消して、目を閉じても、
頭の中だけがずっと起きている。
特別な出来事があったわけではありません。
仕事も、日常も、いつも通り。
でも、心の奥にたまっていた不安だけが、
夜になると急に輪郭を持ちはじめたのです。
「このままでいいのかな」
「私はちゃんと前に進めているのかな」
考えないようにしても、
考えれば考えるほど、胸がざわついていきました。
不安の正体は、いつも夜に現れる
昼間は忙しさに紛れて、
不安の存在に気づかないふりができます。
やることがあって、
人と話して、
目の前のことをこなしていれば、
心の奥まで見なくて済む。
でも夜は違います。
静かになって、
誰の目も気にしなくてよくなった瞬間、
本当の気持ちが顔を出す。
「この先どうなるんだろう」
「誰にも必要とされなかったらどうしよう」
夜に眠れなくなるのは、
弱いからでも、考えすぎだからでもありません。
ちゃんと自分の人生と向き合っている証拠です。
どうしても、一人で抱えようとしてしまう
その夜、
誰かに連絡しようかと何度も迷いました。
でも、やめました。
「こんなことで連絡するのは迷惑かも」
「重たい話だと思われたら嫌だな」
「自分でどうにかしなきゃ」
そうやって、
不安を“一人で処理するもの”だと
思い込んでいたのです。
実際には、
整理できないから苦しいのに。
頭の中で考え続けるほど、眠れなくなる
眠れない夜ほど、
同じ考えを何度も繰り返してしまいます。
答えの出ない問いを、
一人で延々と反芻する。
「もしこうなったら?」
「最悪の場合は?」
「私が悪いのかな?」
でも、
頭の中だけで考えていると、
不安は整理されるどころか、
どんどん大きくなっていきます。
言葉にならない感情は、
閉じ込めるほど膨らんでしまうのです。
思い切って「話す」を選んだ夜
その夜、
私は初めて思いました。
「答えはいらないから、
ただ聞いてほしい」
勇気を出して、
今の気持ちをそのまま話しました。
うまく説明できなかったし、
論理的でもなかったと思います。
「理由は分からないけど不安」
「眠れないくらい、心がざわざわしている」
そんな、まとまりのない言葉でした。
解決策じゃなく「受け止め」が心を軽くした
話してみて驚いたのは、
不安が消えたわけではないのに、
呼吸が少し楽になったことでした。
「それ、無理ないと思うよ」
「ちゃんと考えてきたからこその不安だよね」
その一言で、
胸の奥が少しだけ緩みました。
正解も、
前向きなアドバイスも、
必要なかった。
ただ、
否定されなかったこと。
受け止めてもらえたこと。
それだけで、
不安の重さが変わったのです。
誰かに話すと、不安は“形”になる
不安は、
頭の中にあるうちは曖昧で、
正体が分かりません。
でも言葉にすると、
「私はここが怖かったんだ」
「本当はこれが不安だったんだ」
と、少しずつ見えてきます。
不安をなくすことよりも、
不安を理解することのほうが、
心を落ち着かせてくれる。
あの夜、
それを初めて実感しました。
眠れなかった夜が、無駄じゃなかった理由
その夜、
完全に安心して眠れたわけではありません。
でも、
布団の中で一人で耐えていたときより、
ずっと静かな気持ちで目を閉じることができました。
「一人じゃない」
そう感じられただけで、
夜の長さが変わったのです。
不安は、弱さじゃない
不安で眠れなかった夜は、
できれば思い出したくないものかもしれません。
でも、
あの夜があったからこそ、
私は「話すこと」を選べるようになりました。
不安は、
あなたが真剣に生きている証。
未来を大切に考えている証です。
今、眠れない夜を過ごしているあなたへ
もし今、
不安で眠れない夜を
一人で過ごしているなら。
無理に答えを出さなくていい。
前向きにならなくていい。
ただ、
その気持ちを
外に出してもいい場所があることを、
思い出してほしい。
誰かに話せた夜は、
すぐに人生を変えなくても、
心の向きを少しだけ変えてくれます。
最後に
不安で眠れなかった夜に、
誰かに話せたこと。
それは、
不安を消すためではなく、
一人で抱えなくていいと知るための時間でした。
あなたの不安も、
そのまま話していい。
この場所は、
眠れなかった夜の気持ちも、
静かに置いていっていい場所です。
あなたが、
少しでも安心して目を閉じられますように。
