その夜、特別な出来事があったわけではありません。
仕事を終えて、いつも通り家に帰って、
シャワーを浴びて、ベッドに横になっただけ。
でも、電気を消したあと、
胸の奥に残っていた不安だけが、
なかなか消えてくれませんでした。
「このままでいいのかな」
「私、ちゃんと恋愛できるのかな」
そんな問いが、
頭の中を静かに行き来していました。
不安の正体が、自分でも分からなかった
恋人がいるわけでもなく、
大きな失恋をしたわけでもありません。
出会いは少ないけれど、ゼロではない。
仕事も、それなりに順調。
友達もいる。
なのに、
夜になると、
言葉にできない不安が込み上げてくる。
「何が不安なの?」と聞かれても、
うまく答えられなかったと思います。
ただ、
「この先が見えない」
という感覚だけが、
ずっと胸にありました。
友達には、なぜか言えなかった
不安な気持ちはあったのに、
友達に打ち明けることはできませんでした。
心配させたくなかったし、
「考えすぎだよ」と言われる気もして。
何より、
自分でも整理できていない不安を、
誰かに説明するのが怖かったのです。
「重いと思われたらどうしよう」
「めんどくさい人だと思われたら嫌だな」
そう思うと、
つい「大丈夫だよ」と笑ってしまう。
その結果、
本音だけが行き場を失っていきました。
一人で考えるほど、不安は大きくなった
夜になると、
昼間は気にならなかったことが、
急に現実味を帯びてきます。
「このままずっと一人だったら?」
「誰とも深い関係を築けなかったら?」
考えないようにしても、
考えてしまう。
答えの出ない問いを、
一人で抱え続ける時間は、
想像以上にしんどいものでした。
初めて「話してもいい」と思えた夜
その夜、
なぜか「一人で抱えるのはもう無理かも」
と思いました。
解決したいわけじゃない。
前向きになりたいわけでもない。
ただ、
誰かにこの気持ちを
そのまま聞いてほしかった。
そう思って、
初めて「話す」という選択をしました。
打ち明けたのは、整理されていない不安そのもの
話した内容は、
きれいにまとまった悩みではありませんでした。
「何が不安なのか分からないけど不安」
「恋愛のことを考えると、苦しくなる」
「このままでいいのか分からない」
自分でも驚くくらい、
曖昧で、取りとめのない言葉ばかり。
でも、
途中で遮られることもなく、
否定されることもありませんでした。
「その不安、ちゃんと理由がありますよ」
そのとき、
言われた言葉は今でも覚えています。
「それだけ考えてきたなら、
不安になるのも無理ないですよ」
その一言で、
胸の奥が少しだけ緩んだ気がしました。
解決策を提示されたわけでも、
前向きなアドバイスをされたわけでもありません。
ただ、
「今の気持ちを否定されなかった」
それだけだったのに。
不安は、消えたわけじゃない
正直に言うと、
その夜ですべてが解決したわけではありません。
不安は、
次の日も、またその次の日も、
完全には消えませんでした。
でも、
「一人じゃない」と感じられたことで、
不安の重さが変わりました。
押し潰されそうだったものが、
少しだけ、持てる重さになった。
そんな感覚でした。
言葉にしたことで、自分の気持ちが見えた
誰かに話すことで、
初めて気づいたこともありました。
私は、
恋愛ができない自分が不安なのではなく、
「ちゃんと向き合ってきた」と
誰にも言えないことが、苦しかったのだと。
不安は、
弱さではなく、
真剣さの裏返しだったのかもしれません。
誰にも言えなかった夜があったから
あの夜、
不安を打ち明けたからといって、
人生が急に変わったわけではありません。
でも、
自分を責め続ける流れは、
少しだけ止まりました。
それだけでも、
私にとっては大きな変化でした。
今、不安を抱えているあなたへ
もし今、
誰にも言えない恋の不安を
一人で抱えているなら。
それは、
あなたが弱いからではありません。
ちゃんと考えてきたから。
ちゃんと向き合おうとしているから。
答えを出さなくていい。
前向きにならなくていい。
ただ、
「今、こんな気持ちなんだ」と
言葉にできる場所があるだけで、
夜は少し静かになります。
最後に
誰にも言えなかった恋の不安を
打ち明けたあの夜。
不安は消えなかったけれど、
「一人で抱えなくていい」
という感覚だけが、残りました。
それは、
今でも私を支えてくれています。
この場所は、
言葉にならない不安も、
そのまま置いていっていい場所です。
あなたの夜が、
少しだけ軽くなりますように。
